フクシマの風景
フクシマの風景
少し前のことになりますが、写真家・小林恵さんの作品展が梅田でありました。最終日だったので、ご本人がおられて、長年ぶりでいろいろとお話を伺うことができました。
モノクロ作品を集めた写真展「フクシマノート」は、長期間かけてフクシマの相馬町、飯館村など、20~40Km圏内で撮影されたもので、すべての写真には撮影日と撮影場所とともに、放射線量の記録がつけられていました。
一見すると、のどかな田舎のなんでもない風景に見える写真が多いです。しかし、実際にはごく普通の人々の暮らしが一瞬にして取り去られ、異常事態になってしまった悲しい姿なのです。
「希望の牧場」で撮影された悲しそうな眼をした牛が、とても印象的でした。この牧場は双葉郡浪江町、原発から14km地点にあり、半径20km圏内が警戒区域に設定されるなか、区域内に取り残された350頭を超える牛を飼育しているのです。
戦争中、多くの動物が殺処分にされました。上野動物園の『かわいそうなぞう』の話はあまりに有名です。平時には人間を楽しませるために飼われていた動物を、有事には役に立たず危険だからといって真っ先に殺すのです。戦争が愚かで人間のエゴに過ぎないことが、幼い子どもにも理解できる逸話です。
同じことが今も起こっています。原発作業員は想像もつかないような危険な作業を、低賃金で強いられています。いくつもの請負業者が間に入り、被爆しながら身体をはって過酷な労働をしている本人への身入りはごくわずか。「嫌なら明日から来なくていい」という脅し文句に、弱肉強食の社会、人間さえ使い捨てにしてしまう国の構造が見えます。
このような日本の状況を見てイエスさまなら、どうされるでしょうか。私たちは何をすればよいのでしょうか。
「主は虐げられている人のために裁きをし/飢えている人にパンをお与えになる。主は捕われ人を解き放ち/主は見えない人の目を開き/主はうずくまっている人を起こされる」(詩篇146:7-8)
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Re:
金鐘賢さま
コメントありがとうございます。小林さんはとても人を大切にする方です。福島に通い詰めて信頼され、人々が心を開いてくれたそうです。お人柄の伝わる写真でした。伝えることの力を感じました。