うるわしい栄冠
うるわしい栄冠
敬愛する友人Nさんが天に召されました。退院してうれしいとの声を喜んだばかりだっただけに、信じがたい知らせでした。9月の「みことばと讃美のフェスティバル」で鮮やかな衣装に身を包んで溌剌と歌う姿が、まだ瞼に焼き付いているのに……。
私などがこれほど動揺するぐらいですから、近しい方々の悲しみはいかばかりでしょうか。前夜式には礼拝堂からあふれるほどの参列者が、その死を悼んでいました。それは一同が全能者の御前にもう一度背筋を正されるような、厳粛な感動に包まれた時でもありました。妻の遺言とのことで、喪主であるY牧師自らが司式し、メッセージを語りました。
Nさんは24歳で最初の乳がんを患って手術を受け、その後の人生の半分近くは病気との闘いでした。けれども、ガンのゆえに神を求めるようになり、クリスチャン医師との出会いを通して信仰をもちました。神学生だったYさんに出会い、病の現実を受け止めつつ生涯のパートナーとして歩もうとの約束をかわし、奇跡的に出産を果たして一人娘を得ることができました。
おしどり夫婦で、一人娘をこよなく愛する姿、支えあう姿が多くの人の胸を打ちました。Nさん家族にとっての一日は、健康な者が無為に過ごす日の何十倍もの重みがあったのだと、今頃になって思いを馳せています。
「病を癒してください」との祈りは次第に「わたしを用いてください」という内容に変えられていったと言います。その願いどおり主は、彼女を最期まで用いてくださいました。
2年前には自叙伝を出版し、多くの人に生きておられる神さまを証しすることになりました。度重なるガンの再発に苦しみながらも、小さなことに喜びを見出す姿に、どれほど多くの人が励まされたことでしょう。
彼女の祈りはかなえられました。最期は家に帰りたいとの願いもかなえられ、1週間を家族と過ごすことができました。46歳、早すぎる死と普通は言うのでしょうが、彼女は準備を整え、走るべき行程を走り終えて、ありがとうと感謝のことばを遺して逝きました。
チャーミングで華のある女性だったNさんが、キリストの花嫁として御国でまばゆいばかりの栄冠を、地上のどんな花もかなわないような麗しい義の衣をいただいているのが見えるような、そんな旅立ちでした。
「わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、信仰を守り抜きました。今や、義の栄冠を受けるばかりです」(テモテⅡ4:7-8)
Nさんの本はこちらです。
『空が微笑むから』